2024年5月10日

Arnhem Land Report (2020年1月12日)

4日目ともなるとさすがに疲れが溜まってくる。日曜日だしちょっと休みたいところだが、Yaliと朝からイダキカッティングの約束があるので、早起きをしなくてはならなかった。8時に彼の宿泊先で待ち合わせしてたんだけど、のんびりしてたら15分ほど遅刻してしまった。でもそこはYolngu Time。15分は許容範囲のうち。案の定、到着したら誰も居ない。中にいた女性に聞いたら「まだご飯食べているよ」と。結局彼が現れたのは8時半過ぎ。それでも慌てることなく、しばらくして「じゃ、行こうか」という感じで車に乗る。一緒に彼の奥さんも来た。

「どこでカッティングするの?」と聞いたら「空港の方だよ」と。
まあ、2WDのUTA(トラック)だということはわかってるから、大丈夫か、と思ったのが大きな間違いでした。

空港の手前で曲がり、ガーマフェスティバルの会場があるGulkura方面に走る。2005年を最後にフェスティバルには参加してないので懐かしいなあ、と思いながら走って行くと、すぐに未舗装道路に変わる。それは想定内だったけど、ある細い未舗装道路を曲がるとだんだん細くなり、道も凸凹になってきた。さらに悪いことに先日までの雨のせいで、道の真ん中に大きな池のような水たまりがあちこちに現れる。わりとドキドキしながら進んでいった。

しばらく走っていくと、突然Yaliが「止まって」と合図。そして「少し戻って」と。

斧を持って森の中に入る。

イダキカッティングは何度も見ているけど、それぞれ職人さんによってやり方が異なる。Yaliの場合はこうだ。

まず、樹皮を少しはがして指ではじく。これはほとんどの職人さんがやる。Djaluやファミリーは皮をむかずにやることもある。

次に音を聞き分けて空洞だと判断したら斧で切り倒すのだけど、Yaliはたまにトップから斧を入れるのだ。自分の身長あたりの上の方を斧でキズを入れて、中心がわかるぐらいまで切り込みを入れていく。すると中が空いてるか確認して、下を切り倒す。倒したら、先ほどのトップを切り落とし、トップとボトムの穴の大きさを確認してOKだったら車へ運ぶのだ。

それ以外にも驚いたのは、道を走っていると、奥さんがなにやらしゃべり、Yaliが車を停めるように合図する。それを何度が繰り返したのだが何をどう見ているのかがよくわからないけど、見るだけであれはきっとよいイダキの木に違いないと判別できるそうだ。私にはどの森も同じにしか見えないけど。

半日のイダキカッティング中にいろいろ発見があった。

まず出会った生き物は、
– ワラビー2頭
-バッファロー1頭
-エリマキトカゲ1匹
-白オウム多数

バッファローが道の真ん中にいたのには驚いた。何度か見たことはあったけど、あっという間に森に消えて写真は撮れず。ワラビーもぱっと道を横切ったのであっという間だった。

あと、Montjutu(スペルは定かではないがモンジュチュ)という木の実を食べた。
緑のオリーブくらいの小さな実で、柔らかいものを選んで食べると甘酸っぱくて美味しい。さらに赤くなったのはもっと甘さが増して美味しかった。

また途中、GALKILA HOMELANDという小さなコミュニティ(今は誰もいない)やDALWUYという場所に寄ってくれた。どちらも海がきれいで、きっと私に気を使ってくれたんだろう。ありがとう、Yali。

昼過ぎに戻り、お礼に彼らにお昼ご飯を買って別れた。明日もまた別の場所へ行くぞ、と言ってくれてるけど、結構な労働なので心の中でちょっと躊躇している。

イダキカッティング中に不在着信があった。Zeldaからだ。町に戻って折り返すと「もうすぐペイントが終わるよ」とのこと。そのままWallaby Beachへ向かう。

到着すると最後の1本をペイントしている最中だった。2本は仕上がっていて素晴らしいWitiji(蛇)のペイントが施されている。やっぱりペイントが入るとぐっとよくなる。彼らのアイデンティティだから、まさに彼らの魂が入った感じだ。さらにZeldaは自分がペイントした2本にサインも入れてくれた。日本に到着したら是非皆さんに見て欲しいイダキたち。どうぞお楽しみに!

Djaluはいつも自分の作ったイダキを必ず吹いてくれて、「いいだろ?」という顔で自分を見る。でも今回は残念ながらその気配はなかった。昨日張り切りすぎたからか、今日は辛そうだった。体長の浮き沈みはあるだろうけど、もう90歳なんだから無理しないで欲しいな。だから今回は写真だけ撮らせてもらった。

夕方はジェレミー達とヨットクラブで夕日を見ながら美味しいバラマンディという魚を食べ、帰る途中にEast Woodyというビーチに立ち寄った。昔Djalu達が住んでた場所だ。今日はずっと天気が良かったので、海も穏やか。風がここちよい。ヨルングのファミリーとの交流もいいけど、こういった美しいビーチで現実逃避してぼーっとするのもいいものだ。

そろそろ手持ちの現金が少なくなってきた。明日は自分をファミリーにしたDophiya(Djaluの妻)が帰ってくるらしい。またいろんな意味で大変な1日になりそう。